相手の不幸を喪中はがきで知るということは珍しいことではありません。
昨今では葬儀を家族葬で済ませたり、近親者のみでひっそりと行うケースも増えているため周囲が不幸を知らずに喪中はがきで初めて知るという方も多いのではないのでしょうか。
この記事では、喪中はがきではじめて不幸を知った場合のお悔やみの仕方や、不幸を知っていたけれど喪中はがきを受け取った場合の返信の仕方などをまとめています。
喪中はがきとは
喪中はがきとは近親者に不幸があった際に年始の挨拶を書くことを知らせる年賀欠礼ハガキのことです。
「喪中のため年始の挨拶ができません。ごめんね」という意味合いのもので、亡くなったことを知らせる死亡通知や喪中の知らせとは異なりますが、喪中はがきで初めて不幸を知るという方も少なくないことから、死亡通知のような役割も果たしているのが現状です。
喪中はがきへの返信は必要?
喪中はがきを受け取ったら、喪に服す遺族に対してなにか言葉をかけてあげたいと思うもの。それが喪中はがきで初めて不幸を知ったという場合なら尚さらでしょう。
お悔やみの方法は「喪中見舞い」という形でお悔やみ状を送るか、お悔やみ状を添えて香典または供物を贈るのが一般的です。
香典や供物を贈る場合は品物だけを送らずに必ずお悔やみの手紙を添えるようにしましょう。
しかし、悲しみの中にある遺族に対してどんな言葉を伝えればいいのか、何を贈ればいいのかいざとなると悩んでしまうという方も多いのではないでしょうか。
まずはお悔やみの文面から見ていきましょう。
お悔やみの書き方
お悔やみの手紙など遺族に対して言葉をかける際には、死を連想させる不吉な言葉や不幸が重なることを連想させる重ね言葉に注意しましょう。
なるほどという言葉や何気なく使ってしまいがちな言葉の例として「四」「苦」、「重ね重ね」「続いて」「しばしば」などが使わないほうが良いとされる忌み言葉(いみことば)です。
他にも「死ぬ」「死亡」などの直接的な表現や「とんだこと」「浮かばれぬ」などのオーバーな表現も避けるようにします。
喪中はがきで初めて不幸を知った
喪中お見舞い申し上げます
この度はご丁寧なご挨拶状をいたただきましてありがとうございました
お葉書で○○様のご逝去を知り驚くばかりでございます
これまで少しも存じ上げずご親族の皆様並びにご家族の皆様にお詫び申し上げます
遅ればせながらではございますが心ばかりのものをお送りさせていただきましたので御仏前にお供えくだされば幸いと存じます
さぞお寂しいことと存じますがお心強く穏やかな新年をお迎えください
書中ではございますが謹んでお悔やみ申し上げます
○年○月○日
・故人と面識のない場合には青字の2行目は省いてもいいでしょう。
・急ぎお悔やみ状のみを出し、香典や供物を送らない場合は赤字の箇所を省いてください。後日にお線香などを贈ることで失礼にあたることはないでしょう。
・品物ではなく、現金(香典)を贈る場合は赤字箇所を「遅ればせながら心ばかりではございますが同封の香典を御仏前にお供え下されば幸いと存じます」に変えてください。
故人と面識がある方で、改めて直接先方にお線香をあげに行く場合は文面に「後日改めてお線香をあげに伺います」と伝えてお悔やみの手紙のみ送ります。
不幸をすでに知っていて喪中はがきを受け取った
この度はご丁寧なご挨拶状をいただき誠にありがとうございました
○○様が亡くなられてから○ヶ月になりますね
あれから少しお気持ちは落ち着かれましたでしょうか
徐々にではございますがご家族の皆様の寂しさも和らげばと心よりお祈り申し上げます
ご服喪期間につき新年の挨拶は控えさせて頂きます
どうかお身体大切に穏やかで暖かい新年をお迎えくださいませ
○年○月○日
上記の文面のように、お葬式やお通夜で弔問を済ませている方が喪中はがきを受け取った場合の返信では、遺族を気遣う言葉を中心に書くといいでしょう。
・赤字箇所は故人との面識がない場合などで不自然になる際は省いてください。
・青字の箇所は相手が喪中であるため、自分も「あけましておめでとう」や「謹賀新年」などの年始の挨拶は言わずこの喪中見舞いに留めておくという意味の一文です。
文末の日付はいづれも「いつしたためた手紙であるか」差し出し日または書いた日を記入します。
◆
以下にご紹介するお店では、お悔やみの文面を品物に添えて発送してくれますので文面を考えるのが難しいという方にもおすすめです。
購入金額に関わらず文面の作成は無料ですので供物を贈るという方は一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。
文面の変更なども柔軟に対応してくれて、お店の方の対応も非常に丁寧だったので喪中見舞いを検討されている方は是非チェックしてみてください。
お悔やみの品や香典を贈る場合
喪中はがきで初めて不幸を知り、一度も弔問に伺っていない場合はお悔やみ状と共にお香典や供物を贈られる方が多いです。
お線香は一般的に「お返し不要」とされ、相手に気を遣わせない贈り物として喪中見舞いではよく利用されます。
香典の送り方
故人との関わりが深い場合や、遺族と親しいお付き合いがある場合、または過去に自身に不幸があった際に相手からお香典をいただいていた場合にはお香典を贈ります。
金額の目安
お付き合いの程度にもよりますが三千円・五千円・一万円が一般的な香典の相場とされています。
顔見知り程度や友人などの遺族の場合は三千円・五千円が相場とされています。
実際に通夜や葬儀に出向いた場合に包んだであろう金額を目安にされるといいでしょう。
死や苦を連想させる「4」や「9」が入らない端数の出ない切りのいい金額にします。
香典袋の表書き
不祝儀袋(香典袋)には毛筆か筆ペンを用い、必ず「薄墨」で書きましょう。
49日の忌明けが済んでいたら薄墨でなくてもよいとする向きもあるようですが、「仏事=薄墨」という認識の方も多くいらっしゃいますし、昨今では薄墨タイプの筆ペンはコンビニや100均でも簡単に手に入るので薄墨で書いておくのが無難です。
文字は崩さずに丁寧に書き、ボールペンやマジックなどで書くのは絶対にやめましょう。
仏教 |
「御霊前」「御仏前」「御香典」「御香料」など |
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神式 |
「御霊前」「御玉串料」「御榊料」など |
キリスト教 |
「御花料」「お花料」「御霊前」など |
仏教の場合「御霊前」は49日までの表書きで忌明けが済んだら「御仏前」と書くと言われる方もいらっしゃいますが、同じ仏教でも浄土真宗の場合は異なります。
浄土真宗では人が亡くなるとすぐに浄土に召されて仏になると考えられていますので、霊という概念はなく「御霊前」という表現を使用することはありませんので忌明け前でもすべて「御仏前」と書きましょう。
蓮の絵柄がついているものは仏教用ですのでその他の宗教では使用しません。
神道では神前に捧げるもので「仏」ではありませんので「御仏前」は使用しません。
キリスト教ではカトリックとプロテスタントで表書きが異なります。
一般的には水引のない十字架や百合の花が描かれたキリスト教用の袋を使いますが、カトリックで「御霊前」を使用する場合は白無地で黒白または銀一色の水引の香典袋を使います。
プロテスタントでは御霊は異教の偶像崇拝とされているので「御霊前」は不適切な表書きで失礼に当たるので使用しません。
どちらも共通で使用できる「御花料」としておくのが無難でしょう。
教会名の前には宗派が付いていますので式が行われる教会を事前に確認しておいてもいいでしょう。
水引の下の部分には差出人の氏名を書きます。名前は必ずフルネームで書きましょう。
中包みの書き方
上記のように表書きを書くのは上包みで、香典袋の多くはお金を入れる中包みが付いています。
中包みには表側に金額を書き、裏側に差出人の氏名や住所を記入します。
最近の香典袋には金額や差出人を書く欄が設けられているものも多いので記入欄がある場合はそれに沿って書きます。
中包みが付いていないタイプの香典袋や「不幸が重なる」という連想を避けるため、あえて中包みを使用しないという場合でも、氏名は表に書くので香典袋の裏側・中央より下の左側に金額・住所を書きます。
誰から幾ら香典を頂いたかという管理がしやすくなるため、差出人情報と金額の明記はきちんとするのが遺族のためでもあります。
金額の書き方につて詳しくはこちら ↓
お札の入れ方
お札の入れ方には諸説あり、入れる向きにこだわる必要はないと言う考えや、新札でも構わないという方もいらっしゃいます。
ここではよく用いられるお札を逆さまに入れるケースをご紹介します。
お札には表と裏があり顔がある方が表となりますので、「お札の顔が袋の裏側を向くようにして「顔が下」になるように入れます。
お札を逆さまに入れたりしない場合でも、二枚以上のお札を入れる場合はきちんと向きを揃えて入れるようにしましょう。
香典を郵送する場合
現金は普通郵便で送ることができませんので必ず「現金書留」で郵送しましょう。
バレないからといって封筒に香典を忍ばせて普通郵便で送ったり、現金書留で送るからといってお札だけを裸で入れることのないように、きちんと手渡しするときと同様に香典袋に入れて表書きや金額などを書きます。
郵便局に行けば香典袋も入る専用封筒があるのでそれを用います。
きちんと正式な状態で送ってこそ誠意が伝わるというものです。
供物の送り方
香典ではなく品物を贈る場合は、日持ちのする菓子折りやコーヒーやお茶などの食品が供物の定番ですが、「今さら香典を送っては遺族の方に気を使わせてしまわないか」というように、遺族もあえて訃報を知らせなかった場合や、遺族が弔問や香典の辞退を申し出られた場合にはお悔やみの手紙だけを送るか、お返し不要と言われる線香を贈られてもいいでしょう。
金額の目安
二千円・三千円・五千円が相場と言われていますが、こちらもお付き合いの程度で判断されるとよいでしょう。
特に遺族が香典などの辞退を申し出られている場合は、あまり立派なお供えだと余計な気を遣わせ負担をかけてしまう可能性もあるので、2,000円~5,000円ほどのお線香にするなど気持ち程度の品でよいでしょう。
品物選び
お供えの品として菓子折りを利用される方が多いように思います。
また故人がコーヒーが好きだったというならコーヒーをお供えにしてもよいでしょう。
いずれにせよしばらくは仏前に供えておくことなどを考慮して、日持ちがして常温保存OKのものにするのが好ましいと思います。
お線香は香りの好みがあるから敬遠される方もいらっしゃいますが、お返しの負担をかけない故人を偲ぶ贈り物として喪中見舞いでは定番です。
熨斗(のし)の書き方
品物には必ず熨斗(のし) を掛けて贈るようにしましょう。
喪中はがきを頂いて喪中見舞いを贈る場合はそのまま「喪中御見舞」とされてもいいですし、御霊前か御仏前か亡くなってからの時期が不明の場合などは「御供」とだけ書いてもいいでしょう。
水引は黒白か紺白、関西地方では黄白が一般的です。
水引の色に明確な決まりはなく、地域によって一般的に用いられる水引の色は異なりますが、黒白か紺白あたりにしておくのが無難かと思います。
水引の下に書く名前はフルネームで書いてもいいですが、苗字だけとされるケースが多いように見受けられます。
ただし、身内や近隣関係などで同じ名字の方が他にもいる際は苗字だけではややこしくなる場合もありますので、そんな時はフルネームの記載をするもの遺族に対して親切です。
熨斗(のし)に書く場合でも香典袋と同様に薄墨で書くようにします。
外のしと内のしで迷われる方も多いかと思いますがどちらでも間違いではありません。
外のしは強調したい贈り物の場合に用いられるとされており、仏事の場合では誰からのお心遣いかがひと目で分かるよう、法事などで仏前に並べておく際によく利用されます。
もちろん、今回のような喪中見舞いでも外のしで問題はありませんが、宅配の場合は配達中の破れや汚れなどを防ぐために内のしで贈っても構いません。
喪中見舞いの時期
不幸を知った段階でするものですので、喪中見舞いは時期に決まりはありません。
しかし、寒中見舞いは時期が決まっています。
一般に喪中はがきが届くのが11月中旬~12月中旬頃と予想されますので、喪中はがきで不幸を知ったという場合はできるだけ早く年内にお悔やみを伝えるようにしましょう。
喪中はがき以外で年が明けてから訃報を知ったという場合は正月の松の内(1月1日~7日、関西では1月15日まで)を避け、2月4日の立春までに「寒中見舞い」としてお悔やみ状を送るとよいでしょう。
文面は以下に例をご紹介致します。
不幸を知らなかった場合の寒中見舞い
寒中お見舞い申し上げます
〇〇様ご逝去の知らせに驚くばかりでございます
知らなかったとはいえ弔問にも伺わず申し訳ございませんでした
遅ればせながら謹んでお悔やみを申し上げます
心ばかりの品をお送りいたしますので御仏前にお供えいただけますと幸いに存じます
ご家族の皆様におかれましてはさぞお心落としのことと存じますが
寒さ厳しき折どうかお身体大切にお過ごしくださいませ
○年○月○日
不幸を知っていた場合の寒中見舞い
寒中お見舞い申し上げます
ご服喪中と存じ年始のご挨拶は控えさせて頂きましたが寒冷の候皆様いかがお過ごしでしょうか
○○様がご逝去なさって数ヶ月 ご家族の皆様にはお寂しい毎日をお過ごしのこととお察しいたします
寒さ厳しき折皆様どうかお体大事にお過ごしくださいませ○年○月○日
その他にも誤って年賀状を出してしまった場合など各種文例はこちら ↓
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不幸を知らなかった場合はもちろんのこと、すでに知っていて葬儀に参列したり弔問に出向いているという方でも、喪中はがきを受け取ると「なにかしたほうがいいのかな」と感じるものです。
特にご不幸を知らなかった場合は喪中はがきを受け取った以上なにかしなくてはと焦ってしまわれる方もいるようですが、喪中見舞いは義務ではありません。
故人を想う気持ちや遺族を気遣う心で行うものですので、少しでも遺族の方の様子が心配になったり、故人とのお別れを偲ばれるという際には喪中見舞いをされてはいかがでしょうか。