葬儀には様々な種類がありますが、近年は「その人らしい葬儀」が求められる時代になってきています。一般的な種類といえば「家族葬」「一般葬」「密葬」などですが、その他にもあまり知られていない葬儀の種類もございます。故人の生前の人なりや、遺族の気持ちを汲みながら葬儀の種類を検討されてはいかがでしょうか。
ここでは、自身が見送る立場となった際に役立つ、葬儀の形式や種類についてご紹介をいたします。
葬儀に対する考え方が多様化し、しきたり(宗教)や形式(規模)にこだわらず、「その人らしさ」を表すことが増えています。また、遺族だけでしめやかに送りたい、豪華な祭壇はいらない、余計な出費を抑えたいなどの理由から、葬儀全般の小規模化・簡素化も進んでいます。そのため、葬儀業者も故人や遺族の希望を考慮したさまざまなスタイルの葬儀を用意し、柔軟に対応できるようになってきています。まずは葬儀の種類からご紹介をさせていただきます。
【葬儀の種類とそれぞれの特徴】
<一般葬>
かつては最も多くみられた葬儀の形式が一般葬です。斎場で行われることが多く、仏式が一般的となっております。昔から現在に至るまで、よく行われる伝統的な葬儀のことを指します。
一般葬には遺族や親族の他、故人と親しかった友人、知人、職場や地域で付き合いのあった人が参列します。
また通夜、葬儀・告別式と、宗教的な儀式が二日間にわたって行われるのも特徴です。
そのため「二日葬」と呼ばれる場合もあります。
参列者は、故人様および遺族の友人・知人、職場の関係者、近所の方など広い範囲に及び、葬儀の規模が大きくなるのが特徴であり、故人様と縁のあった方々に参列していただくため、「社会的な死」「社会的なお別れ」を知らせる意味合いも強くなります。
(一般葬を選択される主な理由)
・故人様に友人・知人が多かったため
・故人様が若かったため
・地域の風習や儀礼を重んじるため
(その他一般葬のメリット)
・広く色々な人に故人様を見送ってもらえる
・参列者と故人様との様々な思い出に触れられる
一般葬は多数の参列者に連絡をしないといけないため、葬儀まで時間が無い中、遺族がご参列いただく方全員に連絡をするのは、手間も時間もかかりすぎてしまいます。
そのため、各お付き合いの中で、「代表者や中心となる方に葬儀の案内を行い」「その方から関連の方に連絡していただく」ようにするとスムーズです。どなたに連絡すれば良いのかをきちんと検討が必要です。また「お別れの場をしっかりお伝えするため」「お知らせ漏れを防ぐため」に、事前に年賀状や携帯電話の電話帳などで、どのような方がいるか把握しておきましょう。
<家族葬>
近年都市部で増えているのが「家族葬」です。家族や親族で故人様をお見送りする葬儀のことを指します。故人様とのアットホームな別れの時間を過ごすと想定された葬儀であるため、あまり細かい定義がないというような声もよく聞かれます。
参列者は家族や親族、ごく親しい友人など少人数となります。家族以外の参列者は10名~30名が目安でしょう。
(家族葬を選択される主な理由)
・家族だけでゆっくりお別れをしたい
・故人様の生前の遺志
・葬儀に呼びたい人が少ない
・葬儀費用を抑えたい
・形式にとらわれない葬儀をしたい
家族葬は、家族や親族のみでの葬儀のため、参列とならなかった方へ、明確な理由を答えられるようにしておくことがいいでしょう。仏式の葬儀の後には命日ごとに法要もございますので、今後のことも視野に入れ親族の参列者の範囲も検討することをおすすめいたします。
<密葬>
後日、参列者を迎えて本葬やお別れの会などを開くことが予定されている場合に、家族と近親者のみで行う葬儀のことを指します。
一般的には、故人が著名人や企業の社長などで、多数の方が参列される方に多く見られます。そのような方のお葬式では、ご遺族や近しい身内の方が対応に追われ、大切な故人とのお別れがゆっくりとできないことが想定されます。
ですので、後日に本葬やお別れの会を行なうことを前提として、家族や近親者だけで密葬を行なうことが多いです。
密葬の場合、訃報の連絡をするのは密葬に参列する方のみで、ほかの方々には訃報を伏せておくのが基本です。本葬までに外部に訃報が漏れないように注意が必要です。
また密葬に参列される場合も、口外しないように十分な注意を払いましょう。
<一日葬>
通夜は行わず、葬儀・告別式のみを一日で執り行うことをいいます。
通常は通夜を含め2日間のところ1日で終えることができるので、遺族の負担が軽減され、高齢の遺族や仕事が忙しい場合に適した葬儀となります。
1日で終えるため参列できない方も出てきますので、事前に連絡を行うなどの必要があります。また比較的新しい葬儀の種類となるため菩提寺への事前確認も必要となります。
<直葬>
その名の通り、直接火葬となる葬儀をさします。一般的には通夜・告別式を経て火葬となりますが、通夜や告別式を行わずして遺体の安置場所から直接火葬場に行き火葬を行います。死後24時間以上たたないと火葬を行えない為、安置場所の確保が必要となります。また家族や親族のみ立ち会うのが一般的となり、お別れの時間も短くなります。直葬では、宗教儀式を執り行う式場や祭壇が必要でない為、費用を安く抑えることができます。時代の変化により、お通夜や葬儀・告別式を不要とする考えの人が多くなりました。現在では葬儀全体の2割程が直葬にて執り行われております。この割合は都市部ほど高く25%近くにもなり、4~5人に1人は火葬だけの直葬にて弔われております。
<社葬>
会社の役員など、その企業に貢献した人が亡くなった場合に、会社が主催して行う葬儀のことを指します。
関係先様への連絡や通知等に時間がかかるため、密葬の行った後に本葬として行ったり、お別れの会として行うこともあります。
この場合は、喪主は遺族、施主は会社が担い、葬儀委員長を会社の社長や重役が務めるのが一般的となっています。一般葬とは異なり費用も会社が一部または全額負担を行います。
社葬にはさらに細かく「合同葬」と「お別れの会」もあります。合同葬とは遺族と会社が合同で行います。お別れの会は社葬の名称が変わったものです。社葬と比べ、宗教儀式を廃して、故人の業績を称え告別することを主な目的とすることが多いようです。
社葬は、故人の業績を称え故人の会社への想いを引き継いでいくという意思をアピールする場でもあります。また、代表者が亡くなった場合は後継者が事業の承継を宣言する場ともなるため、会社の今後のイメージを左右する場合もあります。
<生前葬>
生前葬とは葬儀ではなく、当人がお世話になった方々への「御礼の場」であると認識をされるのがいいでしょう。あまりなじみのない葬儀の種類ではありますが実は古くから行われてきた儀式のひとつとなっています。生前葬は生前に当人が主催者になって自由に行うものとなっており、自ら感謝の言葉や気持ちをお伝えすることができます。実際に亡くなった際には家族のみで葬儀・告別式を行うのが一般的とされています。生前葬の費用は会費制となるのが一般的です。親しい友人やお世話になった方に来ていただき会食や余興などをおこない皆で楽しいひと時を過ごすケースもあれば、僧侶を招いて葬儀に近い形で行われるケースもあります。
葬儀の形式は様々ですが、故人に対するお見送りのお気持ちは皆さま同じだと思います。それぞれの形式にとらわれず、「その人らしい葬儀」ができるのが一番の理想ではないでしょうか。
時代の変化とともに、葬儀の在り方も変化しつつあります。故人を偲ぶお別れの時間を大切にできるためにそれぞれに合った形式での葬儀をされてはいかがでしょうか。
【参考文献】
一生使えるマナーと作法 (著者:明石伸子)