法事に出席する際、お供え物を用意するにあたり熨斗(のし)の表書きやどんな熨斗(のし)紙を用いればいいのか迷った経験はありませんか?
法事は親族が集まる機会ですので失礼のないようにしたいものです。
この記事では法事におけるお供え物の「熨斗(のし)」「渡し方」「金額の目安」「品物選び」についてご紹介します。
お供え物は必要?
法事に招かれた場合はお供えを持参しましょう。
特に法要後に会食の席が設けられていて食事などの振る舞いを受ける場合は手ぶらで行くのはやめましょう。
法事に出席する際に必ずお供えが品物である必要があるかといえばそうではありません。
最近では品物の代わりに「御供物料(おくもつりょう)」として現金を包むことが増えています。
しかし地域によってはお供え物をし、お下がりとして法事後に分け合う習慣がある所もありますので、現金にするか品物にするかは親族間で相談して決めるのがよいでしょう。
皆が皆、現金を持参してお供えの品がないと格好がつかないなんてことにもなりかねません。
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お下がりとは?
法事に出席くださった方やお供えを頂いた方へ、お供えの品物をそれぞれで分け合うことをいいます。
仏壇に供えられたものを分けて頂くということに抵抗がある方もいらっしゃるようですが、お下がりは一旦お供え物として「仏様のものになったお供え物を仏様から頂く」という行為であり、お下がりを通じて仏様に生かされている、持ち帰った後も目に見える形で仏様に感謝し、命やご縁のありがたさを受け止めるという意味合いがあります。
感謝の気持ちをお供えをした方皆で分かち合うといってもいいでしょう。
お下がりはありがたいものですので、配られたらありがたく頂戴しましょう。
私が住む地域(関西)では35日や49日など節目となる法事の際にはご近所の方が前日にお供えを持参し「お供えください」とお供え物を渡す習慣があります。
35日法要まではご近所の方も法要に出席し、49日の忌明け法要は親族(身内)のみで行いますが、お供え物をします。
法事に出席していなくてもお供えを下さった方には必ずお下がりを用意し、法事後当日、または翌日にはお礼の挨拶と共に配ります。
お供えの品物選び
先に述べたように、お下がりの習慣がある場合も考慮してお供え物は分けやすい物を選ぶといいでしょう。
法事のお供え物として利用しやすい一例を以下にご紹介します。
・菓子(どらやき・ゼリー・焼き菓子・せんべいなど)
個包装になって化粧箱に入ってるものが多いのでお供え物としておすすめ。
どらやきでもゼリーでも和菓子・洋菓子にこだわる必要はありません。
夏場ならゼリーにしたり、秋なら栗まんじゅうにしたり季節感を意識してもいいでしょう。
せんべいやおかきなどは人気がある一方でお下がりを作ることを考えると割れやすいため注意が必要。
・飲料(ジュース・コーヒー・日本茶など)
ジュースやコーヒーなどは日持ちがするのでおすすめ。
お供えしやすいようにケースで購入するといいでしょう。
ジュースは缶や瓶より処分しやすい「紙パック」のものが喜ばれる傾向にあるようです。
コーヒーも粉末のインスタントの他にドリップタイプのものがかさばらず重くないため法事では人気です。
・食品(海苔・佃煮・インスタント食品など)
缶詰や瓶詰、乾物など菓子以外の食品も日持ちがして分けやすく、日々の食卓で消費しやすいため、お供え物としてはよく利用されるジャンルのひとつです。
・果物(みかん・柿・りんごなど)
季節にあった果物や、故人が好きだった果物などをお供えする方も多くいらっしゃいます。
果物はお供えしやすいよう、ケースで購入してその箱のまま熨斗・包装をするか、盛籠にしてもいいでしょう。
購入時点で食べごろの物を選んでしまうと、お下がりになった時点で熟しすぎていることもあるので注意が必要です。
特に桃やぶどう、バナナなど熟すと柔らかくなったり水分が出そうなもの、足の早いものは気をつけて選びましょう。
お供え物は形に残るものより、食品などの「消え物」が一般的です。
また、お下がりは必ずしなければいけないということではありません。
お下がりを渡せない事情があるとき
お供え物を全員に行き届くように分けるだけの数がなかったり、遠方でお供えだけを頂いた方など、様々な事情で分けることができないこともあります。
お下がりを作る際は、お供えしてくれた本人のところにその人がお供えした品物を必ず入れると良いでしょう。
自分がお供えしたものが入ってないと「もしかして数が足りなかったのかな」と心配される方もいるので、他の方のお供えで調整するのがいいと思います。
また、数は少しだけど良い品をお供えして頂いた場合などは、お供えくださった方へのみ分配するか、施主が頂いておいてもいいでしょう。
仏様にお供え頂いた物を、法事を執り行う施主が頂くのはごく自然のことですので、こんな事情の場合は代表して施主がお下がりを頂くということでも構いません。
遠方でお供えだけを頂いた方へは改めてお返しを贈るといいでしょう。
その際は一言でも礼状があるとより丁寧です。
お返しを贈らない場合でも礼状か電話で、お供えのお礼と法事が無事に済んだ旨、きちんと連絡するのが礼儀です。
熨斗(のし)紙の基本
熨斗(のし)紙と私達が口にするギフトでは当たり前のこの言葉ですが、のし紙とは掛け紙と呼ばれるものに「熨斗」「水引」を印刷したものです。
さらにこの熨斗(のし)紙に、表書きといわれる御供などの目的(用途)と差出人の名前を印刷または手書きします。
慶事用の画像でご紹介している水引の右上の飾りのようなものが「熨斗(のし)」にあたり、これはおめでたいことでしか使わないため、弔事用の熨斗(のし)紙にはありません。
紅白色以外の水引だけが印刷されたものが、弔事用の熨斗(のし)紙となります。
水引
黒白 | 通夜・葬儀の他に関東地方では一周忌まではお供え物でもこの色を使うのが一般的 |
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黄白 | 主に関西地方での使用が目立ち、通夜・葬儀以外は黄白を使うのが一般的 |
紺白(藍銀) | 地域性は強くないが蓮や百合の絵が入ったものが多い。百合の柄は仏教以外の神道やキリスト教などで使いやすい |
すでに水引が印刷されたのし紙の場合、白は印刷では出ないので白を銀に変えて製品化されています。
表書き
御供 | お供え物につける熨斗(のし)の一般的な表書き 表書きで迷ったらこの表書きでまず大丈夫 |
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御供物(おくもつ) |
お供え物=供物(くもつ)を丁寧に表した表書き |
御仏前(御佛前)※ | 49日の忌明けが済んでいる場合に用いる。漢字は仏でも佛でもよい。意味は同じ |
御霊前/御花料 | キリスト教にはお供えという風習がないので御霊前やお花料にするのがよい |
※忌明け前でも浄土真宗など宗教(宗派)によっては「御仏前」を使います。
のし下に書く名前
「のし下」と呼ばれる水引の下に書く文字は、差出人の苗字、または氏名です。
お供えをする方の中に同じ苗字の方がいると分かっているなら、苗字だけでなく名前まできちんと書くのが親切でしょうし、親族ではないが故人と親しかったため法事に招待された場合などもフルネームで書くのが好ましいと思います。
のしに書かれた名前を見て、施主はどなたから何をお供えいただいたか確認することができますので、のし下には必ず誰からのお供え物か分かるように明記しましょう。
お供えする品物にきちんと包装をしてのしを掛けるのは敬意の表れでもありますので省略せずにのし掛けはきちんとしましょう。
「内のし」と「外のし」
熨斗(のし)紙の掛け方には2種類あり、
熨斗(のし)紙→包装の順にする「内のし」と
包装→熨斗(のし)紙の順にする「外のし」があります。
これはどちらが正解というようなものではありません。
地域や用途によって内のしにしたり外のしにしたりすることもあります。
では、お供え物の場合は内のしと外のしどちらがいいのでしょうか。
こちらも厳密には決まりはありませんが、ひと目でどなたからのお供え物か分かるように「外のし」にされる方が多いように思います。
直接持参せず、お供えのみ贈る場合でも2重梱包などにして、できるだけ外のしで手配できるといいと思いますが、宅配を扱うお店では配達中などの破れや汚れなどを防ぐために「内のし」対応しかしていない所もありますので「外のし」でもきちんと配慮ある発送をしてもらえるか確認しましょう。
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箱が大きくて包装が困難な場合
ギフトショップでお供えの品を購入した場合はお店でのし包装をしてもらえますが、ギフト対応をしていないお店で購入した場合、熨斗(のし)紙は付けれるけど箱が大きくて包装紙の用意が困難という場合もあります。
そんな場合は全部を包めなくても、箱の上下より少しだけ内側にくるサイズがあれば帯のように商品に巻く「帯包装」でもいいでしょう。
実際にサイズが大きい品物や、果物など箱を逆さまに出来ない品物の場合はお店でも簡易包装となる場合もあります。
無理やり包装しようとして中で品物がバラけたり、包装紙がシワシワになるよりはずっと清潔で見栄えすると思います。
のし・包装をはじめ、品物に一言添えて贈りたいという場合でも親身になって相談にのってもらえるお店を紹介させて頂きます。
私は香典返しで利用したのをきっかけに弔事関連のギフトが必要な時は必ずといっていいほどこちらのお店にお願いしています。
お返しの場合の礼状もそうでしたが、お供え物を贈る必要があるときもお悔やみのカードなどの用意もしてもらえたので非常に助かりました。
文章の融通もきいて頂けるうえに1個しか買わなくても無料で対応してもらえるので必要な時すぐにお願いしやすいところもおすすめの理由です。
お供えの渡し方
お供えを持参した場合、いきなり仏壇に供えることはやめましょう。
必ず施主(法事を執り行う家の代表)に「ご仏前にお供えください」など一言声を掛けて手渡します。
現金を包んだ場合も同じようにまずは施主に声を掛けてからが基本です。
風呂敷や紙袋はどうしたらいい?
品物や現金を持参する際に風呂敷や袱紗(ふくさ)もしくは紙袋に入れるかと思いますが、手渡す前には必ず風呂敷や紙袋から出して品物や現金を包んだ不祝儀袋を渡すようにします。
紙袋などに入れたまま渡してしまわないよう注意しましょう。
風呂敷や袱紗(ふくさ)、紙袋は物を持ち運ぶための”道具”ですので相手に差し出すものではありませんので注意しましょう。
お供えへの返礼品
お供えを頂いたらお返しをしましょう。
金額の目安は頂いた額の3分の1~半額程度が目安です。
お返しの表書きは「志(こころざし)」が香典返しや初盆、三回忌などの法要でも、どんな場合でも用いることができるので表書きで迷われたら志とするのがいいでしょう。
のし下には法事を執り行う家(施主)の苗字(田中や田中家など)が一般的です。
お下がりや法要後の会食の席を設ける場合は個別のお返しはしないケースもありますが、個別に引き物(手土産)を用意したり法要には来られなかった方からのお供えには後日お返しを贈ります。
品物は消費しやすく日持ちのする食品や相手が好きなものを選べるカタログギフトなどがよく利用されています。
特に当日持ち帰ってもらう場合は荷物にならないようにカタログギフトなどのかさばらないものを用意される方が多いようです。