香典返しをする際に、熨斗(掛け紙)の書き方についてご質問を頂くことがあるのですが、「志」や「満中陰志」「偲び草」など様々な書き方があります。
本来忌明けというしきたりがない神式やキリスト教でも日本の風習に習い香典返しにあたる品を用意することも珍しくありません。
この記事では一般的な表書きと、地域性の強い表書きや宗教別の表書きなど、熨斗(掛け紙)の基本と共にご紹介していきます。
表書き一覧
のし上(水引上部):
志 | 宗教問わず全般に用いられるもっとも一般的な表書き |
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満中陰志 | 仏式の表書きで、主に西日本を中心に用いられる |
忌明志 | 名古屋など地域性の強い表書き |
偲び草(偲草) | 神式などで用いられる表書き |
召天記念 | キリスト教(プロテスタント)で用いられる表書き |
昇天記念 | キリスト教(カトリック)で用いられる表書き |
感謝 | キリスト教で用いられる表書き |
上記は一例ですが、「志」は宗教や宗派問わずに使うことができるため、香典返しでは「志」がより一般的といえます。
香典返しの表書きで迷った時は「志」にしていればまず問題はありませんので覚えておくとよいでしょう。
書く位置は、水引上部中央にやや大きめにバランス良く書く
のし上の表書きは、喪家の宗教に合わせます。
香典は自分が仏教でも、キリスト教式の葬儀ならば「御花料」などと、
相手の宗教に合わせて書きますが、香典返しは喪家の宗教に合わせて書きます。間違っても香典返しを渡す相手の宗教に合わせて書いてしまうことのないように注意しましょう。
のし下(水引下部中央):
苗字のみ | 喪家の姓のみを入れる場合がほとんど |
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●●家 | 喪家の姓に家と付け 例:「田中家」としてもよい |
喪家とは不幸があった家のことで、亡くなられた方、もしくは喪主の家となります。
例えば、亡くなった父親の姓が田中の場合は、のし下には「田中(家)」と入れます。
喪主を務めるのが嫁いだ娘(佐藤)であっても、田中家のお香典返しとなるわけですから、のし下は「田中(家)」とします。
書く位置は、水引下部中央にのし上よりやや小さめに書きましょう。
文字は薄墨で書く
のし上・のし下共に毛筆(筆ペン)の薄墨で丁寧に崩さず書きましょう。
昨今では忌明け後に贈る香典返しは薄墨でなくてもよいという意見もありますが、
もし仏事=薄墨という認識の方がいらっしゃった場合でも、薄墨で書いておけば安心です。
お店で印刷して貰う場合でも薄墨でお願いするとよいでしょう。
文字は印刷でもOK
お店に依頼した場合などで、表書きを印刷することは珍しくありません。
しかし、「手書きじゃないとダメ」なんてことはありませんので、香典返しを依頼したお店が印刷だった場合でも手書きにこだわる必要はありません。
ただ、うっかり黒い文字で印刷されないように念のため薄墨での印刷かを確認すると安心です。
不安な場合は香典返しや仏事関係の専門店に依頼するとより安心でしょう。
お店に依頼するのがほとんどだとは思いますが、もし自分で熨斗(掛け紙)を用意する場合でも無理に手書きにこだわる必要はありません。
香典返しは数も多いことでしょうし、何かと心労の多い中で一つ一つ手書きで用意するのはとても大変ですので、もし印刷が可能であれば遠慮なく機械に頼りましょう。
満中陰志とは
仏教では人が亡くなってから7週間(49日間)は「中陰(ちゅういん)」といい、死者が現世と冥土の間をさまよっているといわれます。
忌明けとなる49日は「満中陰(まんちゅういん)」といい、香典返しの表書きとして「満中陰志(まんちゅういんし)」と記載します。
中陰の期間を満たした(満中陰)お返し(志)ということです。
満中陰志と書くのは志に対する意味を明確に記載したものと考えればよいでしょう。
水引選び
水引の色は「黒白」「黃白」など様々な種類があります。
地域や宗教によっても水引に異なりがありますので、一般的なものをご紹介します。
黒白 | 香典返しでの一般的な水引 |
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黃白 | 主に関西での使用が一般的 |
紺白 | 黒白と同様に香典返しでよく使用される水引 |
銀一色(双銀) | 主に神式で用いられる水引 |
水引の色選びでは確かな正解はありませんが、地域によっても一般的とされるものが異なりますが、「黒白」が全国的に見てもより多く用いられていますので迷ったら黒白を選ぶとよいでしょう。
仏事の場合、水引は一度結んだらほどけない「結びきり」といわれる形のものを使用しますが、ほどけそうでほどけない「あわじ結び」と呼ばれる結び目を使ってもかまいません。
柄入りの熨斗(掛け紙)を使う際は注意
近頃では、熨斗(掛け紙)に蓮や百合など柄が印刷されたものを見かけるようになりましたが、ここで気をつけたいのが「蓮」の柄を使う場合。
「蓮」は仏教のみで使用するのが好ましいですので、キリスト教や神式の香典返しの場合は綺麗だからといって使わないようにしましょう。
もし仏教ではないけど、柄入りの熨斗(掛け紙)を使いたいという場合は、「百合」などにするのがよいでしょう。